最初に目に入ってきたのは、知らない天井だった。
辺りはぼんやりと薄暗い。夕方と呼ぶには辺りが静かすぎるのできっと早朝だ。手を動かすと麻の感触が伝わってくる。おそらく布団を掛けられているのだろう。
「ん、う……?」
起き上がろうとするが体に力が入らない。ほんの少し力を入れただけなのに眩暈がする。なので起き上がるのは諦めて、とりあえず布団を自分の肩まで引き寄せ包まった。いつも以上に空気が冷たく感じる。
それにしても、布団のやわらかさに比べて……何なのよ、この硬くてゴツイ枕は。
「デボラ」
一体どんな綿を使ってるのかと疑問に思っていると、上から聞きなれた声が降ってきた。
「……りゅ、か?」
「おう、おはよう」
「……おはよ」
デボラははっきりしないままの頭で返事をする。リュカが安堵のため息をつくのが聞こえた。
どうやらリュカがあぐらをかいたその上に頭を置いているらしい。どおりでゴツく感じるわけだ、なんと言ってもこの筋肉質の強靭なふくらはぎの上で寝ているのだから。
「ここは……?」
「山間の村だ、チゾットっていうらしい。宿の部屋をかりて休ませてもらってる」
「あたし、どうなったの……? あの洞窟を上って、外に出て……」
「それからすぐ倒れたんだよ。神父様に見てもらったら貧血だって。疲れがたまってるんだろう、とも言ってたな」
「貧血……疲れ……?」
デボラはおでこに手を当てながら思い出す。そういえば、洞窟から出て日光を浴びた瞬間、急に世界が色褪せてぐるぐる回り出したような。貧血と言われてみれば、たしかにあれは酷い立ちくらみだったように思える。
「……ったく……」
再び、今度は呆れたような大きなため息が聞こえてくる。
「疲れてるんなら言えよ。休憩ならいくらでも取れる旅なんだ、何も無理することないのに」
「…………」
「倒れるまで頑張る必要ない。あの時俺らがどれだけ心配したと思ってるんだ?」
俺ら、というのはきっと仲間のモンスターも含まれているのだろう。リュカの動揺はあまり想像できないが、彼らが慌てふためくさまはなんとなく目に浮かぶ。
「……ごめん」
「……いや、俺も悪かったんだ。気付けなかったこっちにも非はある」
言いながらリュカはデボラの髪に指を通す。普段つけている薔薇の髪飾りは外されているようで、長い黒髪がサラ、と音を立てた。
頭を撫でられているうちに少しずつ意識がはっきりとしてくる。朝焼けだろうか、窓からかすかに光が入ってきて部屋の中を照らした。あらためてリュカの顔を眺めると随分と隈が濃いのが見て取れた。まさか一晩中起きてたんじゃないでしょうね。
「……なぁ、デボラ?」
「何よ?」
デボラの髪をいじりながら、リュカが不安げに問いかけた。
「お前、急にどこかに行ったりしないよな?」
普段の軽口や冗談などとは違う、本当に不安げな、消え入りそうな声で。旅に付き合ってまだ数カ月しか経っていないが、これまでの経験から彼が何を言おうとしているのかデボラにはわかっていた。
重ねているのだ。目の前で灰と化し、消えてしまった父と。
重ねてくれているのだ。人生を賭けてその願いを叶えてやろうと思う程大切な人と、自分を。
「どこにもいかないわよ」
不安を打ち消してやるように、出来るだけ明るく声にする。
「逃げるあても逃げる理由もないのに、突然逃げ出したりなんかしないわ。安心なさい」
「……そう、だな。悪い、急に変なこと聞いて」
デボラの笑顔に答えるように、リュカは茶化すようにへらりと笑った。
あたしの前でわざわざ仮面の笑顔なんか使わないでよ。まだ不安なのなんかバレバレなんだから、いっそ素直に不安だって言えばいいのよ、全くひねくれてるんだから。あたしだって人のことは言えないけど。
「……大体っ!」
伸ばした手をリュカの頬に添え自分の方へグイと引き寄せる。
言葉にせずとも伝わる仲でも、伝えなければわからないことはある。
「“この場所”を他の女に譲る気だってないわよ、バカ」
そう小声でささやいてやると、リュカはちょっとだけ笑ったあと、その唇をくい、とデボラの頬に押し付ける。
普段あれだけ鋭くて察しもいいくせに変なとこで鈍いのよね、この小魚は。
しばらく寝るから、あいつらの分の朝飯を頼む。
あのあとそう言って隣で横になって眠ってしまったリュカを宿に置いたまま、デボラは仲間モンスターを引き連れ散歩がてら小さな市場へと向かっていた。
「朝ごはんねぇ……ここは何が美味しいのかしら」
「昨日の夕ご飯はヤギのミルクのスープでしたよ」
「おいらあのチーズもう一回食べたいぞー」
「あら、なかなか美容によさそうじゃない。それ探すわよ」
「めきー」
肩に乗っていたメッキーが軽く羽ばたく。ゲレゲレはリュカが心配だから離れたくない(ピエール翻訳)らしく、宿で一緒にお留守番だ。
相棒に跨りぽよよんぷよよんと隣を歩く(?)ピエールが首を傾げた。
「でもデボラ、今出歩いて大丈夫なんですか?」
「そうだぞ。あんな長い事気を失ってたのに、もう動けるのか?」
「大丈夫よ、眩暈も収まったもの」
あの時の強烈な立ちくらみの名残はきれいさっぱり消えており、朝日が高く昇るまでもう一眠りした後には頭痛も倦怠感もなかった。心配されるようなことは全くない、のだが。
「……全然心当たりないのよね……」
「心当たりって?」
「いくら旅の最中で貧相な食事だからって、貧血になるほど粗末なご飯じゃなかったし。それにいつも以上に休憩をとってくれてたから、大して疲れは無かったはずなのよ。なのに、急に気絶するなんて……」
ふぅむ、とデボラは考え込む。
ちなみに仲間の中での食事当番はデボラである。旅を始めた頃はリュカに任せていたが、奴隷時代に鍛えられた壊滅的な味覚の所為でリュカの作る料理は食べられたものではなく、仲間モンスターなどは言わずもがな、というわけでデボラは屋敷で雇っていたシェフの見よう見まねで料理を作る羽目になっている。今は船の料理人に習って腕前も食材選びも大分マシになったので、栄養不足による貧血は考えられない。
とすると疲れていたのだろうか。確かにとんでもない長さの洞窟を上ってきたが、仲間モンスターとローテーションを組んで交代しながら進んでいたので、出ずっぱりのリュカと比べたら休憩は十分取れていたはずだ。倒れるほど疲れていたとは思えない。今までの疲れが蓄積されていたのかもしれないが……
「ぴきぴきー」
隣で突然、ピエールの相棒スライムがぽよんぽよんと揺れ出した。
「相棒、わかるんですか?」
「ぴきっきー」
そう鳴いて自慢げに胸を張っている(様に見える)。
「わかるって何がよ?」
「デボラが疲れてた原因です。相棒が心当たりがあるそうで……え、何ですか? 通訳?」
「ぴっきー」
ぽよんぽよんと跳ねる相棒の声に、ピエールが耳を傾ける。
「ぴきぴき、ぴききー?」
「えーと、『もしかしたらデボラ、原因に気付いてないだけなんじゃない?』」
何を言っているんだか、とデボラは首をかしげる。確かにここまで登ってくるのに時間はかかったが、その最中に起こったことを忘れてしまうほどデボラの記憶は脆くない。
「ぴきっぴきー」
「『僕知ってるよ。最近デボラ、買い出しに行くたびにレモン買ってるよね』」
「……それがどうしたのよ?」
レモン、というより柑橘系の果物は昔から好きだった。しかしレモンの酸っぱさが気に入り出したのは最近だ。
「ぴきー、ぴきぴきー」
「『具合も悪いみたい。この間もモンスターの血の匂いが気持ち悪いって言ってたし』」
やたらと匂いに敏感になったのも最近だ。甘ったるいものや脂っこいものも、香りがダメで何故だか受け付けなくなってしまった。
「ぴきぴー、ぴき」
「『それに辺りはこんなに寒いのに、デボラ全然寒そうじゃないじゃない。周りの人間はあんな厚着してるのに。』」
辺りを見回してみると、確かに毛糸のセーターを着ている人間が何人もいた。対するデボラは、いつものシルクのワンピースに毛皮のショール、加えてカーディガンを一枚羽織っているだけだ。
「ぴっきー?」
「『ねえデボラ、最近お腹周りが気になってるんじゃない?』」
言われてデボラはお腹に手をやる。そういえば、あれだけ運動しているにもかかわらずウエストが細くなる気配がない。
ということは、どういうことなのよ。酸っぱいものが好きになって、匂いに敏感になって、体温が上がって、お腹が大きくなるっていうと、つまり。
「……あ」
気付いてしまった。デボラは自分の口を覆う。
「ぴき?」
「『ホントに心当たり、ない?』」
相棒が首を傾げるように、ほよよんと揺れる。
「…………」
無いわけがない。
例の、テルパドールの一件のあった夜。
訪れた時期が砂漠の薔薇のシーズンだったため宿は道楽観光客でいっぱいで、やっと見つけた空き部屋はベッド一つのシングルルーム。直接言葉にしていないとはいえ想いは通じあっているわけだし、二人ともいい大人なわけだし、事に及ぶのは時間の問題だったのだろう。
嫌なら殴って逃げてもらって構わん、と言われ、嫌だったらそもそも旅に付き合うもんですか、と言い返し、お互い初めてだという事実にお互い驚愕し、それから、それから、……それから。
「~~~ッ!!」
いらんことまで思いだして耳どころか全身真っ赤になって頭を抱えるデボラをよそに、ただ一人状況を理解していないピエールがメッキーに問いかける。
「……ということは、どういうことですか?」
「めっきっきー」
「“おめでた”ね、と言われましても……」
「よかったじゃんよ、デボラ。リュカに言ったら喜ぶぞ?」
「そんな悠長なこと出来るわけないでしょ!?」
嬉しそうな仲間達に、思わずデボラは怒鳴ってしまう。突然怒られて、ブラウンはおろおろしながら首を傾げた。
「でもデボラ。リュカに言わなきゃお腹に赤ん坊抱えたままであの洞窟を下ることになるんだぞ? それよりここで落ち着くまで休んだ方が……」
「そんなのダメよ、絶対」
見えるでしょ、とデボラは山のふもとの大きな城を指差す。森の中にたてられたそれは、テルパドールで得た情報の通りの位置にあった。
「あれ、グランバニアって言ってね。あいつのパパの手がかりがあるかもしれない国なの」
「パパって……パパス、さんのことですか?」
仲間達はリュカの事情を知っている。リュカにとって父パパスがどれほど大切な、大きい存在なのかも。
「決めたのよ、足手まといにならないって」
サラボナを出る前、確かにリュカにそう伝えたのだ。迷惑掛けたくないし、出来ることなら手助けしたい。
それに、デボラにとって問題はそれだけではなかった。
「あいつはあたしの恩人なの。あたしの所為で足止め喰らうことになるなんて、あたしが許さないわ」
「だけどよー……」
「そうねぇ……黙っててくれたら、今度大きい街に行った時に桃のはちみつ漬けを買ってあげるわ。ピエールにも相棒にもメッキーにも、ゲレゲレにだって、何か好物を買ってあげましょう?」
「う゛っ……」
揺れ動いているらしい。人語を解するとはいえ彼らもモンスター、単純なものだ。しかしそれでも仲間達は渋っている。心配してくれているのは正直うれしいのだが、それではデボラ自身困ってしまう。
御馳走とデボラの健康を天秤にかけて散々考えあぐねていた仲間たちだったが、そのうちブラウンが顔を上げた。
「……わかった、リュカには黙ってる」
「あらさすがね。物分かりがいいじゃない」
「めきゃー!?」
焦ったようにメッキーがブラウンによっていく。メッキーの言葉を遮るかのように、だけど、とブラウンは付け加えた。
「そのかわり、ここからグランバニアに着くまでの間は絶対戦闘には参加しちゃダメだ。それさえ約束すれば、リュカには黙ってる。それと、グランバニアに着いたらきちんとリュカに言うんだぞ?」
「…………」
意外だった。デボラと同じようにメッキーとピエールも驚いている。デボラの意表を突かれたような顔を見てブラウンは満足したらしく、えっへんと胸を張った。
「そっちが“こーかんじょーけん”だ。だから御馳走はいらないぞ」
「……ブラウン、あんた時々リュカに似てるわよね」
「そうか?」
へへへ、と嬉しそうに笑うブラウン。飼い主に似て理屈っぽいのを皮肉ったつもりが、彼にとっては賞賛の言葉だったらしい。
「ぴきぴきー!」
「くぁー」
「うん、僕も賛成です。デボラが休むのが一番ですからね」
二人もそう言ってます、とピエールが続ける。
「でも、それじゃあんた達が……」
「なーデボラぁ」
問いかけたブラウンは、何やら少し寂しそうだ。
「確かにおいら達はモンスターだけど、それでもリュカの仲間だし、デボラの仲間なんだ。もうちょっと信用してほしいぞ?」
「…………」
それを聞いてデボラはハッとした。仲間への負担を減らそうと気を使っていたつもりが、逆に彼らを傷つけていたらしい。
「……そうね。じゃああんた達に任せようかしらね」
「おう! 任せとけ!!」
彼らに信用がないわけではない。ここまで気を使ってくれているのだから、その優しさに思い切ってもたれかかってしまってもいいのかもしれない。
純朴な彼らの気持ちに軽くため息をついてから、デボラは市場に向かって再び歩き出した。
「さあ行くわよ。今日の朝ごはんは御馳走にしたげるわ」
「え!?」
仲間たちが驚いて声を上げる。
「何よ、いらないの?」
「だって、こーかんじょーけんは戦わないことだってさっきも……」
口では渋っているブラウンも、なんだか物欲しそうな目をしている。素直に好意に甘えられないのなら、あんたの好みの理屈を与えてやろうじゃないの。
「気分がいいから奢ってやるっつってんのよ。ほらあんた達も、好きなの選んできなさいな」
「……き」
喜び勇んで早々に市場に走っていく仲間たちとこちらを覗きこむデボラを見比べ、全て見透かされているのが恥ずかしかったのか、ブラウンは照れ笑いをした。
「……きっ、気分がいいならしょうがないよな! オイラ、とびっきり甘い奴がいいぞ!」
「はいはい、一緒に探してらっしゃいな」
「やったー!!」
重たい金槌をひょいと抱え、ブラウンも市場へ走っていく。
「本当にいいんだな?」
「ええ、かまわないわ」
パトリシアの手綱を調節しながらリュカが問う。デボラは馬車の御者台に座り、足を組みながら答えた。
リュカ一行は、仲間たちと約束した通り、デボラは戦闘には参加せずに馬車で休むという条件でグランバニアに向かうことになった。仲間達は宿に置いておいた最後の荷物を積み込んでいる。
「さっさと行きましょ。あたし、愚図な男は嫌いなのよ?」
「へいへい参りましょうかデボラお嬢様。怖いなーパトリシアー」
茶化すようにリュカがパトリシアの首筋を撫でると、くすぐったそうに鼻を鳴らす。宿で頂いた藁を彼女にやりながら、リュカはこちらを見ないで呟いた。
「……すまん」
「怒るってわかってるなら挑発するんじゃないわよ」
「や、そうじゃなくて……あ、ピエール、ちょうどよかった」
リュカがピエールを呼んで自分の荷物を運ばせた。デボラに手渡して馬車へ入れたほうが何倍も速いのに。
……無理をさせている、と思われているのだろうか。
妊娠という事実を知らないのならば、突然倒れた人間を休みもなく旅に連れ出せば普通はそう思うだろう。だが今回は妊娠していることを黙っているこちらに断然非があるのだから、気遣わせないつもりで言ってやる。
「別に、あんたに申し訳なく思われるようなことはしてないわよ。あたしはただ我儘を通してるだけだわ」
荷物が全て積み終わったらしく、リュカも御者台に乗り込んできた。仲間達が後ろに乗り込んだかどうかを確認して、軽く鞭を振るう。
吊り橋が近くなる。鬱蒼と茂る森の中に立つグランバニア城を眺めながら、デボラはふいに今朝見た妙な夢のことを思い出した。
「そういえば気絶してる間、不思議な夢を見たわ」
「へぇ、どんな?」
「とびっきりの笑顔であんたを起こす良妻なあたしの夢」
「ほう。それはそれは」
残念だったわね、こんな妻を娶るしか選択肢がないなんて本当に可哀想な男だわ。
もしもリュカが悔しがるようだったら、そうやって笑ってやるつもりだったのに。
「とんだ悪夢だな」
平然とそんなことを言うもんだから、思わず言葉に詰まってしまう。
「……でしょう?」
戸惑っているはずなのに、デボラの顔はほころんでいる。そうよね、そもそもコイツは可愛いお嫁さんと暖かい家庭を作ることに幸せを感じるような男じゃないんだったわ。
大きな吊り橋の中ほどに差し掛かり、揺れが激しいのにかこつけて、デボラは軽くリュカにもたれかかる。
「何だよ、急に」
「別に。夫婦なんだもの、これくらい当たり前でしょう」
「……ま、好きにしたらいいさ」
特に動揺するそぶりも見せず、リュカは前を見据えている。その無表情な横顔を眺めながら、これが素のリュカなのだろうとぼんやり思う。
リュカは、子供ができたと知ったら一体どんな反応をするのだろう。普段通り冷静に、へぇ、そう、だなんて返すとは思えないし、かといって慌てふためく様も想像できない。どちらの反応だったとしても、結局デボラの休息を優先することに違いはないだろう。やはり今伝えることは出来ない。
ちょっとグランバニアに着くのが楽しみだわ。デボラが少し頬を緩めると、突然隣のリュカが吹き出した。
「な、何よ!?」
「高いの怖いなら最初から言えっつの!」
「なっ……違うわよバカ!」
「何が違うんだよ、急に寄ってきたりしてさ。外見たくないなら、あいつらと一緒に荷台にいればよかったじゃないか」
「違うっつってんでしょうが! そうじゃなくって今のはっ」
「素直にいえばいいものを、ほらもっとこっち来なさい」
「~~……!」
デボラの言い分を聞き終わらないまま、リュカは笑いながらデボラの肩を抱き寄せる。抗議しようとしたが、無駄な事だろうと諦める。結局はその逞しい腕の中に納まって満足してしまう自分が少し憎い。
言葉にしなければわからない気持ちを全てわからせるつもりもないし、あたしの全てをわかってほしいとも思わない。
なぜならあたし達は、夫婦だとか恋人だとか、そんな言葉で括れるほど単純な関係ではないのだから。
リュカに抱えられたまま、デボラはもう一度その横顔を見上げた。