DQ5 Crimson Darling

Crimson Darling【9】

 全身が凍りついたかのように一切身動きの取れない状態で旦那と引き離され、薄気味悪いオークションで売り捌かれ、挙句怪しい宗教の神殿に連れ込まれた時は全く生きた心地がしなかった。 ……そもそも今の状態で“生きている“なんて言えたもんじゃないわね…

Crimson Darling【8】

 幽霊の王様に頼まれてお化け退治をしたり、妖精の女王様に頼まれて春を取り戻したり、等と思い返せばファンタジーな冒険を繰り広げてきたリュカだったが、さすがに竜の背に乗って大空に舞うことになるとは思っていなかった。「すごいすごい!世界が真っ青で…

Crimson Darling【7】

「おや、どこかでお会いしたような……お客様ですかな?」 フリルのエプロンを身に纏い包丁を持ったまま首を傾げるサンチョは、この頃から一切顔が変わっていない。サンチョこそ一体何者なんだ、と聞くのは城に帰ってからにしよう、とリュカはこっそり決意す…

Crimson Darling【6】

 一緒にお母さんを探しに行こうよ! 見つかると信じてやまない双子達の希望を胸に、国の政治はサンチョやオジロン殿に任せて、リュカ一行はデボラを探す旅を続けていた。イースは勇者としての持ち前の剣の腕と稲妻を操る術で戦闘で大活躍し、アンナは類稀な…

Crimson Darling【5】

 鎖に繋がれているデボラがもどかしそうにこちらを見ている。必死に手を動かしているのは、多分鎖をほどこうと必死なんだろう。 リュカは何度目かの硬い蹄の横蹴りをかわして体制を立て直す。打撃は何発か打ちこんだつもりだが手ごたえが全くないのは何故だ…

Crimson Darling【4】

 塔に備え付けられた数少ない窓から光が差し込む。あの唐突な襲撃から半日過ぎたのか、と朦朧とした頭でかすかに思考する。 誰もいない薄暗い牢屋のような部屋のなか、デボラは拘束されたままぐったりと横たわっていた。(一体何がどうなってんのよ……) …

Crimson Darling【3】

 リュカの国王即位に加えて、2か月近くの早産ではあったがデボラが無事に、しかも双子の出産を終えたことで、グランバニアは国全体が祝賀ムードに染まっていた。 中央広場では大規模な宴会が開かれ、誰もかれもがその幸せに酔いしれた。酒には弱いため普段…

Crimson Darling【2】

 ゴツン。 そういえば初めてまともに会話をした時も、拳骨から始まったんだったな。デボラの頭にそれなりに強めの鉄拳制裁を加え、リュカはそんなことを考える。「ったー……!!」「当然の報いだ。何考えてんだアンタは」 痛みに頭を抱えるデボラを眺めな…

Crimson Darling【1】

 最初に目に入ってきたのは、知らない天井だった。 辺りはぼんやりと薄暗い。夕方と呼ぶには辺りが静かすぎるのできっと早朝だ。手を動かすと麻の感触が伝わってくる。おそらく布団を掛けられているのだろう。「ん、う……?」 起き上がろうとするが体に力…