DQ5 Scarlet Honey

Scarlet Honey【9】

「もうすぐ、ね……」 船の舳先が波を切るのを眺めながら、ぼんやりとデボラが呟いた。「そうだな。あと3時間もあれば着くんじゃないか?」「めきー」 一週間の船旅も終わりに近づき、ようやく見えてきた砂漠の大陸を見据えてリュカは答える。旅の間に随分…

Scarlet Honey【8】

 ポートセルミ港にあった船は、ルドマン一家が普段使う大型客船とは違い乗組員の少ない中型船だった。 今までは船影におびえて近付いてこなかった魔物たちが襲いかかってくるので、乗組員たちと一緒にデボラたちも戦闘に参加することになっている。「……も…

Scarlet Honey【7】

「どうしてあんたと結婚したか教えてあげる。あんたがあたしに尽くしてくれそうな気がしたからよ」 カジノ船での豪華な結婚式を終えて、ルーラで魔力を消費しすぎたリュカがサラボナで倒れた一日後。「だから、これからあたしに尽くしてもらうためにも、あん…

Scarlet Honey【6】

 皿いっぱいに盛られた新鮮なウサギの肉を美味そうに頬張るゲレゲレを眺めながら、リュカは朝から上機嫌だった。「珍しいなー。無駄遣いの嫌いなリュカが、好きなもん食わせてくれるなんて」「昨日の僕達のアイデアのおかげですね。素敵な御褒美です」 市場…

Scarlet Honey【5】

 まだあの小魚男がフローラの夫になるとは決まっていないのに、ルドマンは結婚式の段取りを決めに外に出ていった。 嬉しそうなのは結構だけど、それって娘が結婚する時の父親の感情としてはどうなのよ。ずいぶんリュカを気に入ったらしい浮かれ気味の両親を…

Scarlet Honey【4】

「おかえりなさいませ、デボラ様」「ええ、帰ったわ」 若いメイドが迎え入れる。リュカ様もどうぞ、と言うので言われるがままついていく。ふかふかの赤いじゅうたんに沈み込む靴の感覚に、リュカは未だに慣れていない。 隣を歩くデボラになんとなく違和感を…

Scarlet Honey【3】

 そんなこんなで30分ほど経っただろうか。 ピエールとブラウンがゲレゲレを支え、ゲレゲレの鼻にデボラが裸足で立つ、という曲芸並みの荒業をこなして、デボラは桃へと手を伸ばす。「どうですか、デボラ……様?」「とれそうかー?」「……あとちょっと……

Scarlet Honey【2】

 リュカ達が火山へと旅立ってから2日後。サラボナの街は、大火傷で帰ってきた幼馴染のアンディの話題でもちきりだった。「アンディ、アンディ! お願いよ、目を覚まして!」 必死に声をかける妹のフローラの隣で、デボラは濡れ布巾をアンディの患部に当て…

Scarlet Honey【1】

『若い娘にキャーキャー騒がれるのも今のうちよ。そろそろ結婚も考えないとね』旅の途中で立ち寄った宿で、サラボナ帰りの年老いたシスターがそんなことを言っていた。確かにもう20代半ばだ。世間一般の男なら、嫁を貰って幸せな家庭を築くことを夢見てもお…